慶応大学を卒業し、ワコールに入社という華やかな経歴の持ち主なのに、
芸人になりたいと、平日は会社員、土日は福岡吉本で「ワコール青木」と
して活動。同期にはカンニング竹山、花丸大吉がいる。
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フツー、慶応を出てワコール入ったらエリート街道行くでしょ。
なんでわざわざ芸人?と思いきや、小学校2年のときの文集に
「落語家になりたい」と書いていたそうだ。
こういうのを初志貫徹というのだろうか、わからないが、
ワコールも土日芸人も辞め、25歳の時に立川談志師匠に入門。
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初日に「難しいことは言わない。要するに俺を快適にすればいい」
と談志師から言われ、修行が始まる。
エリートサラリーマンをこなしてきた談慶師のこと、さぞかし
要領よく立ち振る舞い、談志師を快適にしたんだろうと
思っていたら、見習いから前座になるまで1年半、
前座から二つ目まで、なんと9年半というとてもつない長さ
(通常は5年程度)だった。
ギャップだなぁ。
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談慶師を表す有名なエピソードがある。「冷蔵庫事件」だ。
談志師が海外旅行中に冷蔵庫の霜取りをしたがコンセントを入れ忘れ、
宝物ように大事にしていた高級食材を腐らせてしまった。
帰国後、談志師からファクスが1枚届く。
そこには「現状を回復しろ」の書き出しで冷蔵庫の中に入っていた
ものが列挙されていたが、「伊勢エビ、ヒラメ、タイ、アワビ…」と、
もともと入っていなかった食材も追加されていた。
必死に食材をかき集め、謹慎で済んだ、という。
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談慶師が書いた小説「花は咲けども噺せども・神様がくれた高座」
の帯にこんな推薦文が載っている。
「不器用を拗らせたような男が芸人になった。
上手く生き抜けるわけがない。でもだから、愛おしい。 立川談春」
理論派で知性的な方だと思ったら不器用だったんだ。
ギャップだなぁ。
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でも談慶師、前座9年半は伊達じゃない。
コロナ禍で仕事が次から次にキャンセルが続くなか、
修行に耐え磨いてきた学習力、探求力、発想力が実を結び、
20冊以上の本を作家として世に送り出してきた。
僕もほとんどの作品を読ませていただいたが、
どれもクオリティの高さに脱帽し、改めて談慶師の文章力、
そして何より人間力の素晴らしさに胸を打たれた。
ちなみに趣味は筋トレ。56歳になった今でも100㎏以上の
ベンチプレスを上げる。
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さてさて、では本職の落語はどんな芸風で、どんな内容なのか。
これがまた驚くほどギャップだらけ、なんですが、
そこはぜひご自分の目と耳でお確かめください。
「観山寄席」でお待ちしています。
高坂圭
放送作家・脚本家・物語プランナー。主な作品、映画「千年火」「卒業写真」
ブログ:「圭さん日記」