ごらくはらくご

柳家喬太郎師、インタビュー

8月22日(水)に開く、

「落語教育委員会」寄席を記念して、

以前、柳家喬太郎師にインタビューした記事を

掲載します。

少し長くなりますが、面白いので
読んでみてください。

Q 落語を好きになったのは

そうですね、本格的に聞き始めたのは中三ぐらい
じゃないですかね。
その前も、特別好きというわけじゃなく、世間一般
と同じくらい。
小学校の時から演芸番組はよく観てましたが、
今の子どもがお笑い
観てるのとおんなじ感じでした。

Q 卒業して就職されましたが、落語家になると
いう選択肢は?

いや、落語家になる気はなかったですね。
落語で飯を食えるわけないと思ってたし、好き過ぎ
たんじゃないっすかね、
若干揺れなかったわけじゃないんですけど、
畏敬の念が強かったんだんでしょうね。
それに書店員になったんですが、なんでもいいから
就職したわけじゃなく、
好きな仕事だったので満足もしてました。

Q それがどうして落語家へ

書店員の仕事も好きでしたが、やっぱり噺家に
なってみたいという思いが強まったということ
じゃないですかね。

僕は大学生の時に銀座にあった「椀や」という
飲み屋でアルバイトしてたんですよ。
そこは毎週土曜日落語会をやってるとこなんですが、
落語協会が番組作ってたんで前座、二つ目、真打と
毎回三人来て、真打もかなりいい師匠が、
小さん師匠とか小三治師匠とかもちろん来たし、
うちの師匠(さん喬師)も当時まだ四十ぐらい。

それで落研でバイトなんかしてると、当時の前座さんが、
やっぱり前座って下が欲しいんですよね。
上にあがりたいから。それで「あんちゃん、
噺家にならないの」っていうから「絶対になりません」(笑)っていってたんですよ。
「じゃならないのはわかったけど、仮になるとしたら
誰がいい?」「さん喬師匠ですかね」っていったら、
噂がすぐ広まっちゃったらしいんですよ。
それでうちの師匠の耳にも入っちゃって。

それから三年経って、僕は弟子入りをお願いしたんです。
だから行ったときには、「ああ来たか」という感じでした。
断れることもなく、「ああ、しょうがねえかな」という
感じだったんじゃないっすかね。

Q 弟子入りしたときに師匠からいわれた言葉があったそうで すが

「お前はゼロじゃない、マイナスからのスタートだ」と
いわれました。

Q それはどういう意味ですか

落研やってた時代の垢を落とさないなきゃダメだ、
ということですね。
変な口調に固まってるんですよね、やっぱり落研って。
一番いいのは何にも知らずに入ってくることですね、
噺家になるのは。
あんまりなんにもないのを一から仕込むのも大変だけど、
でもなんにもないほうがいいんです、絶対。

真っ白がいいんです。もっといえば白って色すら
ついてないほうがいい。無色がいいんです。
だからその、そういう意味では、僕なんか学生の時に
新作で二つ賞取ったりして完全に色ついてたんですよね。
そういう意味では。面倒くさかったと思いますよ、
師匠はそういう弟子が来たから。

Q 落語の魅力とは

ひとことでいうとシンプルで豊かな芸能だから、
ということかな。
はっきりいうとなんだかよくわかんないですよ、
自分でも。
でもシンプルっていうのはいいですよね。

落語はストーリーを紡いでいく芸能の中では
一番シンプルなんですよ。
ひとりで喋るわけですから、着替えもしないし、
書き割りもないし。
それでもお客さんの頭の中には風景が浮かぶし、
目の前に風景が見えることもあるし、
もちろん爆笑の渦になることもあるし、新しいことも
できるし、古いものもできるし、だからシンプルで
豊かなんですよね。
目の前にものを作っちゃうとそれしか見えない
じゃないですか、
ないといろんなものが見えるんですよね。
ないからこそ、いろんなものが見える。

Q 落語の楽しみ方は

楽しみ方なんて考えないで素直に聴くのが
一番だと思います。
もちろん好きになれば知識もついてくるし、
知れば知るほど楽しくなるという部分もあるし
それも正しいんですけど。
今でもたまに聞かれますよ、事前に調べていった
ほうが楽しいですかとか。
そんなことする必要もないですよ。

予備知識がなければ楽しくない芸能なんが
芸能じゃない、と僕は思う。
予備知識がないところで楽しんでもらうのが
僕らの仕事ですからね。

もちろん知れば知るほど楽しくなりますよ。
落語、歌舞伎興味なかったけど、落語を通じて
歌舞伎を観るようになった、ああ七段目って
こういうことだったのか、へっついってなんとなく
イメージしてたけど調べたらこういう道具だった、
だからこういう風になるんだ、とますます面白く
なったというのはあるけど、その前段階でもって
知らずに聞いて、その時はそれで楽しかったと
いうので十分じゃないですかね。

Q これから挑戦したいことは

いかに休みを取るか(笑)、いかにこういう取材を断るか(笑)、ですね。

博多天神落語会の合間を縫ってのインタビューで
師匠もお疲れだったと思いますが、ちゃんと最後は
サゲてくれて、楽しい時間でした。

8月22日(水)にお会いするのが楽しみです。

高坂圭

放送作家・脚本家・物語プランナー。主な作品、映画「千年火」「卒業写真」
ブログ:「圭さん日記