先日(3/29)、すわ親冶さんのコメディライブを桜坂観山荘で開催しました。
いつもやっている観山寄席とは別の特別企画だったんですが、今日は彼について書きたいと思います。
ところで皆さんは、すわ親冶さんをご存じでしょうか?
この問いにうなずいた方は年がばれるのでご用心。
では、全く知らない人、知っているのに忘れたふりをしてる方のためにご紹介しましよう。話は今からさかのぼること42年前、1969年に戻ります。
この年の10月4日から、当時の子ども達に衝撃を与えた番組が始まります。
ドリフターズの公開バラエティ「8時だョ!全員集合」です。
この番組は1969年から85年の16年間続き、平均視聴率27.3%、最高視聴率なんと50.5%というとてつもない記録を残していますが、そこに登場していた記憶に残る謎の男、それがすわ親冶さんです。
コントの途中で何の脈絡もなく全身白塗りで現れ、ブルース・リーの真似をして「アチョー」という奇声を発しながら舞台を駆け抜けていくすわさんの姿に大笑いしたことを、今でもはっきりと覚えています。まさか後年、仲間づきあいをさせてもらう仲になるとは、想像もつきませんでしたが。
すわさんと出会ったのは、彼が「ザ・ニュースペーパー」という社会風刺コントグループに在籍していた頃でした。当時僕はそのグループのお手伝いのようなことをしていて、打ち上げの席で自然と話をするようになりました。
強面の顔とは裏腹な、とても繊細で優しいすわさんの人柄と、ニュースペーパーのファンから「ひねりもなければ深みもない」と批評された、彼のナンセンスな芸に僕はすぐに惹かれました。
3歳児のTシャツを気負いとともに着る、工事用の手押し車を女性に見立てマンボにあわせて踊るなど、あの永六輔氏が「すわくん、それが何になるの?」と大笑いしながら尋ねたという芸の数々は、涙が出るほどくだらなく、まるで子どもが遊んでいるかのような楽しさに満ちています。
僕は彼の一輪車のダンスを後世に残したく、「千年火」というプロデュースした映画でストーリーとは何の脈絡もなくその芸をスクリーンに登場させました。
この映画はベルリン映画祭に招待されたんですが、ドイツでもすわさんの一輪車ダンスは大受けで爆笑でした。
爆笑といえば、すわさんが作る替え歌の数々もくだらなくて最高です。
たとえばオフコース「さよなら」は、「もう、牛が鳴く~」、シャネルズ「ランナウェイ」は「旦那ウエー、女房が下さ、旦那ウエー」、ツイスト「燃えろいい女」は、「燃えろいいおうち、燃えろマンション、貧しすぎる俺が火をつけた~」。
どうですか、くだらないでしょ。でも歌は抜群にうまいんですよ。だからこそ、そのギャップが余計にたまらなくおかしいのです。
もちろんすわさんの芸はこれだけではありません。シュールで深いひとりコントのステージも魅力的だし、俳優さんとしても最近は活躍されています。
僕は、どんな境遇に陥ってもそれをギャグにし笑いに変え生き抜いていく芸人さんが大好きなんですが、すわさんはまさしく僕にとって「ど真ん中、ストライク」なコメディアンなのです。
ぜひ機会があれば皆さんも、くだらなくてせつなくておかしい、すわさんの舞台を一度観てください。
ちなみに「観山寄席」、記念すべき第一回目のゲストもすわさんでした。
おかげさまで、以降出演していただいたたくさんの落語家さんから、「一回目がすわさんとは、大胆な企画ですねー」と賞賛の声?をもらってます。
高坂圭
放送作家・脚本家・物語プランナー。主な作品、映画「千年火」「卒業写真」
ブログ:「圭さん日記」