ごらくはらくご

夏のおすすめ噺 「青菜」

やっと晴れ間が見えそうな季節になりましたが

毎日暑いですね。暑いなかでも今頃のような

蒸し暑いというのが一番身体にこたえます。

こんな時季に聞きたい落語が「青菜」です。

 

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主人公は植木屋さん。さるお屋敷で仕事中、

「ときに植木屋さん、ご酒はお好きかな」と

旦那から柳影というお酒を勧められる。

もちろんと答え、暑気払いの酒にすっかりご機嫌の植木屋。

鯉の洗いをあてに出したあと、旦那がまた

「ときに植木屋さん、菜はあおがりかい」

「へい、大好物で」

それではと旦那、「おい奥や、植木屋さんに菜を」

すると奥様が、「旦那様、鞍馬から牛若丸が出まして

その名を九郎判官(くろうほうがん)」

「じゃ義経にしておけ」と不思議なやりとり。

植木屋が訳を聞くと、「いやあれは隠し言葉でな。

客の前で菜は無いといわれると私が恥をかく。

で、菜は食べてしまって無いというのをやわらかく、

『その菜を食ろう』その名を九郎、で、あたしが

じゃあ止しておこうというのを『止し経にしておけ』

とこう言ったわけだ」

その話を聞いて感心した植木屋、家に帰って早速

女房に教えて、来た友達に試したところ……。

 

という噺です。

夏の日中、植木屋が撒いた水によって庭の木々を

涼しい風が吹いている縁側の風景。

旦那のゆったりとした風情ある佇まい。

植木屋の威勢の良い飲みっぷり。

そして何度もリフレインされる、旦那の

「ときに植木屋さん」の呼びかけの心地よさ。

 

夏のひととき、エアコンはドライぐらいにおさえて

冷酒なんぞを飲りながら「青菜」を聞く。

僕の夏の楽しみのひとつです。

おすすめは、そうだなぁ、先代の柳家小さん師匠かな。

観山寄席では、古今亭菊之丞師匠がやってくれました。

もちろん、師匠の噺もいいですよ。

 

 

高坂圭

放送作家・脚本家・物語プランナー。主な作品、映画「千年火」「卒業写真」
ブログ:「圭さん日記