ごらくはらくご

人柄が作り出す、すわ親治の笑い

少し長くなりますが、すわさんのことについて
書きたくなったので、ここに掲載します。

 

 

僕がすわさんと会ったのは、彼がまだ「ザ・ニュースペーパー」
という政治や社会を笑いのネタにするコントグループに
在籍していたころだ。もう二十年ほど前になるだろうか。
僕は当時、そのグループのお手伝いなどをしていた。
すわさんのことは、もちろん「8時だよ全員集合」世代ど真ん中
の僕は知っていたが、「ザ・ニュースペーパー」の中では
少し異色の存在だった。
社会性というよりは、ドリフの笑い、シンプルにただおかしいと
いった芸風だったので、グループのファンには
拒否反応を示す人も多く、アンケートに「ひねりもなければ
深みもない」なとど書かれていた。

 

一緒に酒を飲んだとき、すわさんが苦笑しながらそのことを
語ってくれたとき、僕は大笑いし、「いいじゃないすか。それ
キャッチコピーにしましょうよ。中途半端な反骨精神より
バカバカしい方がかっこいいっすよ」と盃をあわせた。

 

比喩ではなく、ほんとに、すわさんの芸はバカバカしい。
三歳のTシャツを気合で着る、白装束の武士姿で切腹を
しようと出て来て、刀が腹に少し当たっただけで「痛ーい」と
つぶやく。虚無僧姿で尺八を手にし、いつまでも吹かず、最後に
てぬぐいで拭いて暗転。
そして極めつけは、工事現場などで土砂を運ぶ三輪車を
女性に見立て、タンゴを踊るというダンス芸。
かの永六輔氏がそれを見て大笑いしたあとで
「で、すわくん、それがなんになるの」といったという
バカバカしさの極致。

 

僕はその芸に感動して、初めて脚本を書き、プロデュースをした
「千年火」(瀬木直貴監督)という映画で、すわさんのダンス芸を
スクリーンに出した。
ストーリーとは全く関係のない展開に、当初監督は「これなんの
シーン?」と首をひねっていたが、「笑いがここであると
映画の息抜きになるから」などと答え、無理やり納得してもらった。

 

さて映画も出来上がり、試写会が東京で行われた当日、
すわさんから電話をもらった。
「今見てきた。まさかあんな大きなスクリーンで自分の芸が
すべて映るとは思わなかった。とても嬉しくて、いま、公園の
ブランコに乗ってワンカップ飲んでる。高坂さん、ほんと
ありがとう」

 

この映画はいろんな賞もいただき、海外でもたくさん上映された
けど、これほど嬉しい褒め言葉はなかった。
不器用だけど優しくて、「ひねりもないし、深みもないけど」、
あったかく、子どもからお年寄りまで腹を抱えて笑える
ザ・芸人。
それがすわ親治です。
そんな彼のコメディショーを桜坂、観山荘別館でやります。
ぜひ彼の見ても何の役に立たない(笑)、でも笑いだけがいつまでも
残る芸を体験してみてください。

 

桜坂の詳細はこちら。

https://kanzan.net/sakurazaka/event-info/8379/

 

別館の詳細はこちら。

https://kanzan.net/bekkan/event-info/7699/

 

 

 

 

高坂圭

放送作家・脚本家・物語プランナー。主な作品、映画「千年火」「卒業写真」
ブログ:「圭さん日記